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食料品店からスマホ相談窓口へ:イオンが紡ぐ、顔の見えるモバイルライフ

イオンモバイルの物語は、単に通信市場に新たなプレイヤーが登場したという話ではない。それは、長年お客さま第一を掲げてきた巨大流通グループが、生活の中心となりつつあったモバイルの世界でもその理念を貫こうとした挑戦の記録だ。彼らは、価格競争の消耗戦に真正面から挑むのではなく、自らが持つ全国の店舗網、築き上げたブランドへの信頼、そして特定の顧客――複雑なプランやデジタル機器に不安を感じるシニア層や、家計に優しい選択肢を求める家族層――への深い理解を強みとして活かした。こうしてイオンモバイルは、誰もが気軽に立ち寄れる店舗での温かい対面サポートと、イオンという大きな生活圏(エコシステム)との繋がりを軸に、独自の道を切り拓いていった。それは、テクノロジーの進化の中で時に置き去りにされがちな人の繋がりを大切にする、イオンらしい実直なアプローチだった。

イオンが通信の世界へ踏み出した理由

2010年代初頭、日本のモバイル市場はまだ高価で、多くの制約が利用者を縛っていた。そんな中、総務省の後押しもあり、大手キャリア(MNO)から回線を借りて低価格サービスを提供するMVNOが、新たな選択肢として生まれ始めていた。

イオンの旅は2014年、MVNOの先駆者である日本通信(JCI)との協業から静かに始まった。イオンの店舗でイオンスマホとして、手頃なスマートフォンと低料金SIMのセット販売を開始。これが特にシニア層や価格に敏感な層に響き、格安スマホという言葉を広めるきっかけの一つとなった。この経験を通じて、イオンはモバイル市場の現実と、顧客が抱えるリアルな不満――特に2年縛りのような長期契約や分かりにくいサポート体制への不満――に直接触れることになった。

この顧客の声こそが、イオンを次なるステップへと突き動かした。自分たちでサービスを設計し、責任を持って提供できる本格的なMVNOへ。2016年2月、イオンモバイルが誕生した。これにより、イオンは顧客の声に直接応え、契約期間の縛りをなくし、全国の店舗で一貫したサポートを提供する体制を整えた。通信サービスにおいても、お客さま第一を、という理念を具体的な形にした瞬間だった。そして、サービス開始後も、イオンモバイルは顧客の声に耳を傾け、サービスを進化させ続ける道を歩むことになる。

人の温もりと、的確なターゲティングが織りなすイオンらしさ

イオンモバイルが本格参入した当時のMVNO市場は、価格競争が激しさを増し、大手キャリアも対抗策を打ち出す厳しい環境だった。その中でイオンモバイルが選んだのは、単なる安売り競争ではない、独自の価値を提供する道だった。それは、イオンならではの資産を活かし、特定の顧客層に深く寄り添う、実直な顧客志向のアプローチだ。

その戦略の中心にあるのが、全国に広がるイオンの店舗網だ。イオンリテール執行役員の井原龍二氏がリアル店舗でのサポートは絶対的な強みと語るように、イオンモバイルはこの物理的な接点を最大限に活用する。オンラインが主流の競合が多い中、イオンモバイルの顧客は、日々の買い物のついでに気軽に店舗に立ち寄り、料金相談からスマホの設定、操作方法の案内、困りごとの解決まで、顔の見えるサポートを受けられる。井原氏が指摘するように、この対面サポートが(顧客に)安心感を与える点は、特にデジタル機器に不慣れな層にとって、何物にも代えがたい価値を持つ。スマホメンテナンスという無料サービスも提供し、顧客のデジタルライフを継続的に支えている。

そして、この店舗での安心感という価値を、明確な顧客ターゲティングによって最大化している。特に重要なのが、イオンの主要顧客でもあるシニア層だ。井原氏によれば、2025年4月時点でイオンモバイル契約者の実に60代以上が4割弱を占めるという。この世代に対し、井原氏はご高齢の方々にスマホを使っていただくハードルを下げるお手伝いができればと語る。分かりやすい料金体系、シンプルな端末、そして何よりいつでも店舗で相談できるという安心感を前面に出すことで、スマートフォンの利用を後押ししているのだ。長年親しんできたイオンという場所への信頼感が、この戦略を力強く支えている。

家族層も、イオンモバイルが大切にする顧客だ。家計全体の通信費を抑えたいというニーズに応えるシェアプランは、井原氏が圧倒的な強みと自信を見せる。一つの契約でデータ容量を家族で分け合えるシンプルさと経済性が受け、(親世代がまず契約し、その後)家族全員で乗り換えるパターンが多いという。さらに2023年には、ドコモ回線利用者向けに、個別プランでも適用される家族割引を導入。大手キャリアの割引を意識しつつも、複雑さを避けたイオンモバイルらしい分かりやすさを重視した設計で、より多くの家族がメリットを感じられるよう工夫している。

これらの戦略の根底には、お客さま第一を体現する顧客サービスと信頼性への強いこだわりがある。イオンモバイルは、実際の利用に近い通信速度の目安を公表するなど、透明性の確保にも努めている。店舗スタッフは、顧客一人ひとりの状況を丁寧に聞き取り、最適な提案を心がける。店舗、電話、チャット、ウェブサイトといった多様なサポートチャネルは、顧客がいつでも安心して頼れる環境を提供するための投資なのだ。新しい取り組みを発表する際にも、イオンモバイルは必ず店舗サポートの価値を改めて強調する。サービス内容が進化しても、顧客に寄り添う対面サポートという揺るぎない基盤こそが、イオンモバイルらしさの核であり、信頼の源泉であることを示している。

加えて、柔軟なプラン体系も、顧客の声に応え続けてきた証だ。0.5GBから最大50GB(シェアプランでは最大200GB)まで、非常に幅広い選択肢を用意。データ繰り越し、契約期間の縛りや解約金なし、ドコモ回線・au回線からの選択可能といった自由度の高さも、多様なニーズに応えている。イオンモバイルのプラン設計は、常に顧客の声に耳を傾け、地に足のついた改善を続ける実直さが特徴だ。例えば、2023年に新設された10GBプランは、利用者のもう少しだけデータ容量が欲しいという細やかな声に応えた、まさにイオンモバイルらしい対応と言えるだろう。単に選択肢を増やすだけでなく、一人ひとりのちょうどいいに寄り添おうとする姿勢がうかがえる。このように、市場環境やライフスタイルの変化に合わせて料金プランを柔軟に見直し続けることも、顧客から支持される大きな理由なのである。

イオンエコシステムという、揺るぎない土台

イオンモバイルの魅力は、通信サービス単体にとどまらない。それは、イオンリテールやイオンフィナンシャルサービスなど、グループ各社が提供するサービスとシームレスに連携する、イオンの広大なイオン生活圏戦略の重要な一部であることだ。このエコシステムとの統合こそが、イオンモバイルの持続的な成長を支える強固な基盤となっている。

その代表例が、イオングループ共通のWAON POINTとの連携だ。イオンモバイルの月額料金をイオンカードで支払うと、通常の4倍という高い率でWAON POINTが貯まる仕組みは、顧客にとって大きな魅力だ。井原氏はポイントはイオン経済圏の共通言語と位置づけ、この連携が単なる販促ではなく、顧客とイオングループ全体の結びつきを深める戦略的な意味を持つと認識している。そして、(ポイント連携は)まだまだ伸ばせると、今後のさらなる活用に意欲を見せる。

イオンフィナンシャルサービスとの連携も、ますます重要になっている。イオンカードやイオン銀行との連携は多岐にわたり、例えばイオン銀行の住宅ローン利用者はイオンモバイル料金が割引になる特典もある。井原氏は金融連携もますます重要になると語り、決済、ポイント、通信を組み合わせることで、顧客にとってより便利なサービスを提供していく考えを示唆する。

そして、これらすべてを結びつける場として、店舗はお客さまとの最大の接点であると井原氏は強調する。全国のイオン店舗は、単なる販売・サポート拠点ではなく、イオンの多様なサービスと顧客が出会い、繋がるための重要なハブなのだ。このエコシステム統合により、手厚い対面サポート網の維持コストを吸収しつつ、グループ全体の顧客エンゲージメント向上と収益性に貢献することで、イオンモバイルは事業としての持続可能性を確保している。

課題を乗り越え、イオン経済圏のハブへ

独自の戦略とエコシステム連携で成長を続けるイオンモバイルだが、MVNOとして避けて通れない課題、すなわちネットワーク速度の問題は依然として存在する。特に混雑時間帯の速度低下の可能性は、利用者の懸念材料となりうる。イオンモバイルはこの課題に対し、参考速度の公開や速度切り替えアプリの提供といった透明性で向き合い、速度面での潜在的な不利を、手厚いサポートやエコシステム全体で提供される価値によって補っていく戦略をとっている。

しかし、イオンモバイルの真価はスペック競争にあるのではない。その成功の本質は、イオンという企業が持つ独自の小売資産――広大な店舗網、揺るぎないブランドへの信頼、そして既存の強固な顧客基盤――を最大限に活用し、特定の顧客ニーズ、とりわけアクセスしやすく、人の温もりを感じられるサポートへの渇望に応えるサービスを創り上げ、それをイオンのエコシステムの中に深く統合したことにある。それは、派手さはないかもしれないが、顧客一人ひとりに実直に向き合い、分かりやすさと安心感を追求し続ける、イオンモバイルらしさそのものだ。

2025年4月時点で契約回線数は160万回線弱に達し、イオンモバイルはMVNO市場で確固たる地位を築いた。そして今、次なるステージを見据えている。それは、単なる安価でサポートが手厚い通信サービスに留まらず、より大きなイオン経済圏の中核としての役割を担う未来だ。井原龍二氏は、その目指す姿をイオン経済圏のハブになれればという言葉で表現する。彼の言葉からは、イオンモバイルを起点として、ポイント、金融、そして店舗といったイオンの多様な資産がより有機的に結びつき、顧客にとってさらに価値の高い体験を創り出そうという強い意志がうかがえる。

今後の課題として井原氏は、お客さまとの接点である店舗をどうDX(デジタルトランスフォーメーション)していくかを挙げる。単に対面サポートを提供するだけでなく、デジタル技術を活用して店舗体験をいかに向上させ、オンラインとオフラインをシームレスに繋いでいくかが問われる。また、注目が集まる生成AIの活用については、現時点では研究レベルとしながらも、将来的な顧客サポートや業務効率化への応用可能性を探っていることを示唆する。

イオンモバイルの物語は、単なる通信事業の成功譚ではない。それは、お客さま第一という変わらぬ理念を、デジタル時代においても追求し続け、自社のユニークな資産を最大限に活かすことで、巨大企業がひしめく市場でも独自の価値を創造できることを示した、示唆に富むケーススタディだ。井原氏が語る未来像の実現に向け、イオンモバイルはこれからも、そのらしさを失うことなく、イオン経済圏のハブとして、顧客一人ひとりのイオンのある暮らしを、より豊かに、より便利にしていくための進化を続けていくのだろう。


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